スイス発ホラー映画「ブルーマインド」のネタバレと感想を紹介していきます!
※本記事にはネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
転校、口うるさい母親、そして迎えた初潮…美しい少女にはコントロールできないものたちが、彼女を苛んでいく。
ブルー・マインド(原題:BLUE MY MIND) / 2017 スイス
監督 :リサ・ブリュールマン
脚本 :リサ・ブリュールマン
出演
ルナ・ヴェドラー/ ゾーイ・パスティル・ホルトアイゼン
あらすじ
親の都合で転校することになった少女・ミア。
転校先の学校では心優しいクラスメイトが彼女を気遣うも、ミアは授業を妨害する不良グループの仲間に加わろうとする。
不良グループらはミアをからかうが、女子たちのリーダー格であるジアンナは徐々にミアを受け入れ始める。
万引き、ドラッグ、男遊び…ミアには経験のないような危険な遊びを続けるジアンナら。
そんな環境の変化と同じく、ミアの身体にも変化が訪れていた。
初めて迎えた月経。抑えきれない食欲。そして…
みどころ
思春期の少女たちの美しさと不安定さ
この映画に登場する子供たちは、一部を除いて悪い子ばかり。
主人公ミアやジアンナはとても美しい少女たちですが、万引きをして遊んだり、学校の遠足でドラッグをキメたり、簡単に寝ちゃったり…とやっていることはなかなかえげつない。
それでも思わず見入ってしまう美しさと危うさのバランスが印象的な映画でした。
後半のCGだけとっても残念…
ネタバレになるので深くはかきませんが、この映画を「人魚映画」としてみたい人はおすすめできません!そのくらい、後半のCGで一気に映像のクオリティが下がりました。
ただそれでも見てほしいくらい、面白い映画だったのでジャンルのことは忘れて、まっさらな印象で見てほしい映画です。
結末(※以下ネタバレ注意)
ミアの身体は日に日に変化していく。
足の指はくっつき、下半身には鱗が生える。
身体の関係を持った男子からは性病扱いを受け、周りの人間からは距離を置かれてしまう。
そんなある日、泥酔して溺れたジアンナを助けるために自らも水に飛び込んだミア。
人間離れした泳ぎでジアンナを無事救出するが、それと同時に自分の脇腹にエラができているという決定的な体の変化に気付いてしまう。
なんとかつながった足の指を切り、鱗をはがそうとするものの、その状況をジアンナにみられてしまい、ミアはショックから自暴自棄に。
薬物で朦朧となった状態でパーティ会場へ戻ったミア。
男たちに囲まれたところへ、ジアンナが助けに来るが、ついに足を大衆に見られてしまう。
自宅へ帰り、意識を失ったミアが目を覚ますと、彼女の下半身は完全に魚になっていた。
なにかを悟ったように、落ち着いたミアはジアンナに電話をかける。
すぐに駆け付けたジアンナは、ミアの下半身を毛布で包み、軽トラックの荷台に乗せる。
そして2人は海を訪れる。
ジアンナに携帯電話を借りて、母親に電話をかけるミア。
「ママたちが恋しい」涙をこぼしながらそう話し、他愛のないことを2,3言かわしたあと、最後に「またね、ママ」と伝え、電話を切る。
波打ち際で抱き合う二人。
「怖くない?」と尋ねるジアンナに、「大丈夫」と答えたミア。
「悲しまないで、色々ありがとう」そう言い残したミアは、振り返ることなく海へ還っていく。
感想と考察
これはホラー映画ではない
個人的にはとても好きな映画である一方、ホラー映画だと思ってみると、肩透かしを食らいそうな印象です。
どちらかといえば、大半の女性が思春期に体験したような、抑えきれない衝動を表したドキュメンタリー、もしくはヒューマンドラマが適切なジャンルではないかな、と。
女性であれば月経中の食欲過多、性的欲求の高まり、いら立ち…どれかしらは思い当たる節がある、という人が殆どではないでしょうか。
名作映画「ファイトクラブ」が、男性が本能的に抱える衝動を描いているとすれば、こちらは女版ファイトクラブ。
崩壊するビルを眺め、自身を受け入れた主人公のように、ミアは人魚として生まれ変わった自身を受け入れるエンディングでした。
ミアは何故人魚になった?
この映画の本質として、ミアがどうして人魚になったのか、であったり、人魚とはなんなのか、というところはさほど重要ではないのです。
だから、映画を見て得られる情報だけでは、深い考察はできません。
ただ映画の冒頭、波打ち際でひとり佇む小さな女の子が映っていることや、ミアが養子ではないかと悩んでいたことを含めると、ミアはもともと海で暮らしていた人魚の子供で、何かの理由で人間に拾われて育てられていたのかもしれません。
個人的な意見としては、この映画の世界の人魚は初潮を迎えるまでは人間の身体なのではないかな、と思っています。
人間に育てさせる、托卵のような形で繁殖している生き物なのではないかな~と。
どうして魚を食べた?
素直に解釈すれば、人魚の身体に変わりゆくミアの変化の表現の1つですが、これらは映画全体で一貫して描かれている、「抑えきれない衝動」を最もわかりやすく描いています。
・食欲
思春期や月経中の女性は、ホルモンの変化により激しい食欲の増加に見舞われることがあります。
・破壊衝動
映画の初めから、ミアはずっと現状を壊したいのです。
学校、家族、未熟な自分…すべてを打破したいミアにとって、母親の大事にしている魚を食べることは、家庭の安定を破壊するもの。
ジアンナという少女
ジアンナは不良グループのリーダー格であり、ミアの憧れの存在であり、人知れず孤独を抱えている少女です。
明確には描かれていませんが、彼女はおそらくバイセクシャル、もしくはレズビアン。
万引き後の逃走劇でミアと見つめあうシーンで、何となく勘づいた方も多いのではないでしょうか。
男性と性行為をしている様子ですが、それは孤独や欲を埋めるためのものであり、相手の男性に対する愛情のようなものは全くなさそうです。
その一方、端的に言えば気持ち悪い姿になったミアに寄り添い、最後は海に還る手伝いをするような優しさももった一面もあります。
彼女も自分の孤独から目をそらし、自身のセクシャリティからも目をそらし、ドラッグや異性との性行為に逃げていました。
しかし自分の変化を受け入れられず自暴自棄になるミアとは対照的に、ジアンナは徐々におとなしくなっていきます。
最終的に自分の変化を受け入れたミアとジアンナはやっと対等な友人として、互いを抱きしめるのです。
まとめ

男女で感想が変わりそうだから、男性の感想も聞いてみたい映画だね!
この映画がおすすめの人
・思春期に体の変化に悩んだ女性
・美しい少女を堪能したい人
この映画がおすすめできない人
・謎がしっかり解き明かされる映画を見たい人
・血や痛々しい描写が苦手な人
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